巣/人生の意味/植毛

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2014-01-01から1年間の記事一覧

シンジケート感想183・184

受話器とってそのまま落とす髪の毛もインクボトルも凍る夜明け前 インクは通常対凍性が高い気がするし、髪の毛に凍るほどの水分が通常含まれているように思えないので、「通常凍るはずのないものが凍るほどに寒い」という強調の表現。『受話器』が登場してい…

シンジケート感想181・182

街じゅうののら犬のせた観覧車あおいおそらをしずかにめぐる 『街じゅう「の」「の」ら犬「の」せた』という「の」と『あ「お」い「お」そら』が韻を踏むようになっている。狭い場所にのらいぬを押し込んで、『しずかにめぐる』とは異様な光景だが、韻を踏み…

シンジケート感想179・180

「男の子はまるで違うねおしっこの湯気の匂いも叫ぶ寝言も」 男女が会話していて、女性の発言。男女に違いはいろいろとあるが、ここでは『おしっこの湯気の匂い』と『叫ぶ寝言』に言及している。 そのような湯気が立つところから、冬であると想像される。山…

シンジケート感想177・178

薬指くわえて手袋脱ぎ捨てん傷つくことも愚かさのうち 『「く」すりゆび』『「く」わえて』と、冒頭から「く」によって韻が踏まれている。『てぶ「く」ろ』『傷つ「く」』というところにも存在。 全体的に攻撃的な語が多い。『脱ぎ捨てん』『傷つく』『愚か…

シンジケート感想175・176

終バスに二人は眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて 『<降りますランプ>』が特徴で中心。バスで降りる時に鳴らし、止まってもらうために席の隣についているボタンとランプググると、実際は「止まります」で、降りる客が止まることを表明するとともに…

シンジケート感想173・174

歯を磨きながら死にたい 真冬ガソリンスタンドの床に降る星 空白による区切りがある。五・七・三・九・七?単語の分断があるのは三と四の間だけなので、無理やり音で切って読んでも際立って違和感が起きるほどでもない。 『死にたい』のパワーが高い。それ以…

シンジケート感想171・172

シャボン玉鼻で壊して俺以外みんな馬鹿だと思う水曜 『俺以外みんな馬鹿だと思う』はそれなりに一般性がある感情。時間を表す語はこれまで季節イメージに近いものが多かったような気がする。平日の真ん中である水曜。 『シャボン玉鼻で壊して』がこの歌の特…

シンジケート感想169・170

あっかんべかわせば朝の聖痕は胸にこぼれた練り歯磨き(トゥースペイスト) 聖痕はイエス・キリストの磔刑時の傷、またはそれに似た信者らに表れた傷。後者はキリスト教の「奇跡」に分類されるもので、強い共感や妄想の表れであったり、偽装であったりする。 …

シンジケート感想167・168

冬の歌 眠るピアノ弾きのための三連の金のペダルに如雨露で水を ピアノには足で操作するペダルが三つあり、音を伸ばしたり弱めたりするときに使う。金色はその色として標準的。 一、二句目の『眠るピアノ弾きのための』がよくわからない。音も六、六でずれが…

シンジケート感想165・166

浴槽に鳴っているのは黄緑の栓につながるみじかい鎖 ただそのままの情景描写をしたというだけのような内容。生き物も何もないので、寂しさが伝わってくるというか、それ以外に特にない。ひたすら無味という感じ。『黄緑の』『みじかい』などは特に不必要な情…

シンジケート感想161・162・163・164 と少し

嘘をつきとおしたままで眠る夜は鳥のかたちのろうそくに火を 『嘘』『鳥のかたちのろうそく』 『火を』は罪滅ぼし的な意味合いで行っているのか?よくわからない。 「まだ好き?」とふいに尋ねる滑り台につもった雪の色をみつめて 『「まだ好き?」』『滑り…

シンジケート感想159・160

塩粒のような星の群れを笑う 髪まで地に繫がれしガリバー ガリバーとは『ガリバー旅行記』のガリバーだろう。『地に繋がれし』から小人の軍隊に捕縛されたところを指しているとみられる。 危険な巨人として縛られて『髪まで』とあるように首を回すことすら封…

シンジケート感想157・158

糊色の空ゆれやまず枝先に水を包んで光る柿の実 人間や動物がおらず、風景と植物の描写のみ。空でも眺めたいような気持ちなのだろう。 『糊色の空』は曇り空について指しているのだろう。『水を包んで光る柿の実』という視点が独特。 手をつなぎ眠る風の夜卓…

シンジケート感想155・156

こわくなることもあるよと背を向けたまま鳥かごの窓を鳴らして 『こわくなる/こと』、『背を向けた/まま』というように、音の切れ目に重要な語があり、意味が一瞬間違って伝わる。前者では『こわくなる』のが作中主体に読めるが、実際には作中主体は誰かを…

シンジケート感想153・154

「愚か者の惑星(ほし)からきたの?」ウオーターグリースに浮かぶ気泡みつめて ウオーターグリースは髪のセット剤。 誰への問いかけか。気泡に自分の顔が映っているのだろうか。『愚か者の惑星』は独特の言い回しである。あまりの異質さに、自分と同族ではな…

シンジケート感想151・152

甘栗の匂いに二人包まれてゆく場外馬券売り場まで 三句目から五句目において、意味と音の切れ目があいまいでつかみにくい効果になっている。『ゆく』が無しでも何となく意味がつかめるにもかかわらずはめ込まれているために全体にバランスが崩れている。『場…

シンジケート感想149・150

抜き取った指輪孔雀になげうって「お食べそいつがおまえの餌よ」 孔雀は雑食性で、口に入る大きさならば昆虫、両生類、爬虫類となんでも食べ、野菜も好む。 指輪は、おそらく大切な人からの贈り物だったものだろう。その関係の解消から、指輪が無用になって…

シンジケート感想147・148

桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから 桟橋は船を着岸するための橋状の係留施設。ザブは花王から発売されていた洗濯用合成洗剤。1999年に発売終了。「頑固な汚れに、ザブ」のキャッチコピーでコマーシャルされた。 『愛し合』うことは…

シンジケート感想145・146

空の高さを想うとき恋人よハイル・ヒトラーのハイルって何? ハイル・ヒトラーはナチス時代にヒトラーをたたえる掛け声。ハイルの意味は万歳に近いらしい。意味で区切れば七・五・五・七・七で、定型ではない。 『ハイル・ヒトラー』はナチスの象徴であるが…

シンジケート感想143・144

ベーカリーのパンばさみ鳴れ真実の恋はすなわち質より量と 『ベーカリーのパンばさみ』へ『鳴れ』と命令し、しかもその内容は『真実の恋はすなわち質より量』。無生物で、本来の目的がしゃべることでも音を出すことでもない物へ、意味のこもったメッセージを…

シンジケート感想141・142

「メイプルリーフ金貨を噛んでみたいの」と井辻朱美は瞳を閉じて メイプルリーフ金貨はカナダの金貨。非常に純度の高い金でできている。金貨を噛む行為は昔、取引の際に純度を確かめる目的で行われていた。オリンピック等でメダルを噛むパフォーマンスは定番…

シンジケート感想139・140

3 天津甘栗 終わりに近づいていて、夏→風→秋とテーマになっている。 秋になれば秋が好きよと爪先でしずかにト音記号を描く 『秋が好きよ』と言いながらも『爪先でしずかにト音記号を描く』という話半分、退屈という様子は、特段嫌いではないけれど、という…

シンジケート感想137・138

試合開始のコール忘れて審判は風の匂いにめをとじたまま 『風』テーマ。 『風の匂い』は実際にはグラウンドの芝か何かの匂いだろう。なんとなく目を閉じてみると、思いのほかよい風が吹き、心地よい気分になったという。『めをとじたまま』というのは見えな…

シンジケート感想135・136

パレットの穴から出てる親指に触りたいのと風の岸辺で 『風』は前の首とかぶっている。『触りたいの』は話し言葉である。絵を描いている恋人(?)にちょっかいをかけた、という内容だろう。 『パレット』『風の岸辺』という明るさを感じる語、『親指に触り…

シンジケート感想133・134

空転の車輪しずかに止まっても死につづけてる嘘つきジャック 空転は車輪の空回り。空転の車輪は車輪刑を指していると思われる。人間を車輪に括り付けて回転させることで、遠心力によって体が引き裂かれる。カタリナという車輪の拷問を受けた成人にちなんで、…

シンジケート感想131・132

真夜中の大観覧車に目覚めればいましも月にせまる頂点 大観覧車で眠り、起きると頂点につくところだった、という内容。 定型であり、その分違和感なく内容が受け取られる。物理法則や一般常識に当てはめてありえない事態が現出しているわけでもない。 観覧車…

シンジケート感想129・130

シャンデリア引き降ろされて洗われる夕べおろかな約束ひとつ シャンデリアは照明器具の一種で、装飾的な意味合いが大きい。掃除の際には引き降ろして洗う。業者に任せることも多いらしい。 『洗われる夕べ/おろかな約束』『洗われる/夕べおろかな約束』の…

シンジケート感想127・128

目をみちゃだめ 前夜(イブ)のための前戯か頬をうちあえばあかあかと唐がらしの花環(リース) 『前夜(イブ)』とあるから、『花環(リース)』はクリスマスリースと想像される。 頬を打ち合ったので、腫れてあかあかと見え、唐辛子のリースのようだ、ということな…

シンジケート感想124・125

海にゆく約束ついに破られてミルクで廊下を磨く修道女(シスター) 夏らしい語として『海』がある。そこに行くという約束が果たされなかったことから、自棄になって廊下掃除をミルクでしている。 『ついに』によって、最初は延期などだったのに、延び延びにな…

シンジケート感想123・124

夏の終わりに恐ろしき誓いありキューピーマヨネーズのふたの赤 七・五・五・十・五。 恐ろしき誓いについての情報もキューピーマヨネーズのふたがどう関係しているのかも全く情報がなく全体的に取りようがないが、個人的には直感的に面白いとは思った。 三句…