巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想147・148

桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから

 

 桟橋は船を着岸するための橋状の係留施設。ザブは花王から発売されていた洗濯用合成洗剤。1999年に発売終了。「頑固な汚れに、ザブ」のキャッチコピーでコマーシャルされた。

 『愛し合』うことは自分とその相手の間の個人的な関係で、一回限りの再現不能であるものである。それに対して、コマーシャルのキャッチコピーは何度も繰り返される。その目的は、大量生産、大量消費の商品の消費者になれと要求することで、誰が相手でもよく、とにかく数を多くしようとするような目的がある。

 桟橋で愛し合うことが憚られるのは、それは解放された空間で、愛し合うという個人的な行為が行われるべきではないからだ。しかし、『がんこな汚れにザブがあるから』とまるで汚れることが問題であるかのように言って、『ザブ』がそれを解決できるかのように、使い古されるキャッチコピーを用いて解決しようとしている。

 相手と愛し合うことのペナルティが汚れることであり、それは洗剤石鹸である『ザブ』で防げる、というのは酷い発想であるが、爽やかなキャッチコピーにそのような思いがかき消されるような効果も発生している。

 

 

 

 

 

 

回るオルゴールの棘に触れながら笑うお前の躰が目当て

 

 オルゴールは棘が板をはじくことで音を出す。動いているオルゴールに触れながら笑う、ということからいたずら好き、無邪気、といった性格が想像される。その『お前』の『躰が目当て』、セックスがしたいだけ、と心のうちに呟いたような短歌。

 『棘』といった危なげな言葉を用いつつも前半はユーモラスで、後半が男の本音のような恐ろし気な内容。『お前の』で予告しつつも一気に五句目で落としている感じで、緩急を感じる。