巣/人生の意味/植毛

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2014-01-01から1年間の記事一覧

シンジケート感想121・122

自転車の車輪にまわる黄のテニスボール 初恋以前の夏よ 自転車の車輪にテニスボールを付ける習慣については、個人的にはあまりなじみがないが、それなりによくあることらしい。バランスのためだとか取り出して遊べるという目的で行われる。 『初恋以前の夏よ…

シンジケート感想119・120

若き海賊の心臓? 真緑に揺れるリキッドソープボトルは 『リキッドソープボトル』は要するに洗剤入れのことで、それが『若き海賊の心臓』に見えたといっている? 『真緑に揺れる』のこともよくわからない、中の洗剤が揺れている様子? 『海賊』『心臓』など…

シンジケート感想117・118

「自転車のサドルを高く上げるのが夏をむかえる準備のすべて」 『すべて』と言い切っているところに爽やかさがある。背の高い知り合いが来るのだろうか。春から薄着をするような元気のある子なので夏の準備が少ないのかもしれない。 親に「夏の準備をしろ」…

シンジケート感想115・116

「吼え狂うキングコングのてのひらで星の匂いを感じていたよ」 キングコングはアメリカの特撮映画、またはその中に登場する巨大なゴリラ。島から連れてこられて見世物にされるが鎖を引きちぎって脱走し、島で仲良くなっていた女性と遊んだりなんだりして最後…

シンジケート感想113・114

「ボーカルは顔ばっかりでマフィアならゴッドファーザー級クラスの音痴」 マフィアはイタリアの暴力組織。ゴッドファーザーはマフィアなどのボスの尊称、呼称。もともとはカトリックによる洗礼時の代父。 あまり語り掛けとしてのことばには見えず、普通の短…

シンジケート感想111・112

「おじさん人形カーネル・サンダース相手にどもっているようじゃパパにはとても会わせられない」 カーネル・サンダースはケンタッキー・フライド・チキンの創業者、ハーランド・デーヴィッド・サンダースの通称。カーネルはアメリカのケンタッキー州に貢献し…

シンジケート感想109・110

チェシャ・キャッツ・バトル・ロイヤル 「林檎の皮をあげにゆこうよクラクションの真似しかしない馬鹿なオウムに」 『チェシャ・キャッツ・バトル・ロイヤル』の歌は全て会話文。チェシャ猫は不思議の国のアリスに登場する架空の猫。 『林檎の皮』といういか…

シンジケート感想107・108

人はこんなに途方に暮れてよいものだろうか シャンパン色の熊 シャンパン色は透明感のある黄金色。 七・七・八・九。四句だが三十一音より多い。 実際このような色の熊もいるだろうが、個人的な直観としてテディベアが思い浮かんだ。その印象から歌全体をテ…

シンジケート感想105・106

春を病み笛で呼び出す金色のマグマ大使に「葛湯つくって」 マグマ大使は手塚治虫による同名漫画の主人公。金色。マモル少年に笛で呼び出され、敵と戦うロケット人間。葛湯は葛粉を原料とするとろみのある飲み物。温かく、風邪に対して効用がある。 『春を病…

シンジケート感想103・104

ながいこわい夢を洗い流してくれO₂ケアより優しい声で O₂ケアはコンタクトレンズの洗浄液。読みはオーツーだろう。 六・六・六・八・七。流すという内容に反して読み流しずらく、じわじわと残る。音の切れ目のない冗長な調子は『ながいこわい』につながる。 …

シンジケート感想101・102

花びらに洗われながら泣いている人にはトローチの口移し ほぼ定型だが、トローチが四句・五句の間で切れている。『花びらに洗われながら泣いている人』は何となく想定できる。そういった人を見たのかもしれない。しかし『トローチの口移し』は現実ではなく、…

シンジケート感想99・100

だけどわかっていたらできないことがある火のゆりかごに目醒める硝子 目覚(めざ)めるではなく目醒(めさ)める。 三・七・九・七・七。三句目まで変則。初句からいきなり逆接の『だけど』、補うとすれば『わかっていたらできないことがある』の逆であるか…

シンジケート感想98

後ろ手にかくしてるのはパトカーの頭にのっけてあげるサイレン? クエスチョンマークで情報量を増やしている。会話文風、『のっけてあげる』も口語的。『かくしている』のはなぜか、というところからも考えられる。覆面パトカー。

シンジケート感想96・97

深すぎる覚醒に総べられしテロリストに紫陽花色の銃身 無理やり五・七・五・七(八、字余り)・七に音を当てはめることもできるが、意味を通すならば五・十・六・七・四などになる。 『深すぎる覚醒に総べられしテロリスト』は暴力的カルト集団のことか。『…

シンジケート感想94・95

船の名を読むために銅貨落とし込む鳩の糞まみれの双眼鏡ピノキュラー 『銅貨落とし込む』は観光地にある有料の双眼鏡に金を入れることを指しているのだろう。外に置いてあるので、『鳩の糞まみれ』ということも十分にあるが、それでも見たいものがあるなら使…

シンジケート感想92・93

星は朝ねむる 彗星をつかんだからさマネキンが左手首を失くした理由は 全体的に明るい雰囲気があるが、『マネキン』が所詮は人形であることが大きく、手首を失くしたところで大きな問題にならないことが原因か。『つかんだからさ』と、全くありようのないこ…

シンジケート感想90・91

愚かなかみなりみたいに愛してやるよジンジャエールに痺れた舌で ジンジャエールは、ジンジャー(しょうが)で味付けし、カラメルで色を付けたノンアルコールの炭酸飲料。しょうが独特の辛みが特徴的。 四・八・七・七・七。『愚かなかみなり』は形容詞と対…

シンジケート感想88・89

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい 『サバンナの象のうんこ』という唐突でユーモアがある装置。それに『よ』と呼びかけ、『聞いてくれだるいせつないこわいさみしい』と気持ちを告白している。どれもネガティブワードで、平仮名…

シンジケート感想86・87

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり ドラえもんは有名な藤子・F・不二雄による漫画のキャラクターで、未来から来たロボット。腹に付けた四次元ポケットから未来の便利な道具を取り出す。あらゆる面で駄目な少年、のび太を助…

シンジケート感想84・85

すごく てぬき 憎まれているのは俺か雪のなか湯気立てて血の小便小僧 小便小僧は像で、血は通っていないし、憎みなどもしないが、『俺』はそういう感情を受け取ったということで、何らかのうしろめたさがあって、小便小僧を見てそれが蘇ってきたという状況。…

シンジケート感想82・83

犬 ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は この短歌から浮かび上がる情景は、薄暗い部屋で一人でいて冷蔵庫を開けて作業しようとしたら、ふいに涙が流れてきた、という感じだった。まず、涙について、視覚による理解をしているので真っ暗な…

シンジケート感想80・81

フェンシングの面マスク抱きて風殺すより美しく「嘘だけど好き」 フェンシングはヨーロッパの剣を用いるスポーツ競技。2008年にフェンシング競技で日本人初のオリンピック銀メダルを受賞した。 二句目、四句目で格助詞『の』『より』が句の頭になっている。…

シンジケート感想78・79

腱鞘炎に祝福を 黒鍵は触れるそばからパセリの色に 腱鞘は手や足の腱の周りを包み込む部分。関節の動きにとって重要。ピアニストや漫画家などの手先を酷使する職業の方は腱鞘炎になりやすいらしい。黒鍵はピアノの黒い鍵盤。 『腱鞘炎に祝福を』は腱鞘炎を起…

シンジケート感想76・77

春雪よ恋の互換性想いつつあがないしばら色の耳栓 あがなうは『罪の償いをする』と『あるものを代償に手に入れる、買い求める』という二つの意味を持つ。ここでは後者で『耳栓』を買ったということだろう。贖う、購うという風に漢字が違うが、同源である。 …

シンジケート感想74・75

抱きしめれば 水の中のガラスの中の気泡の中の熱い風 定型から大きくはみ出している。意味で切るならば六六七七五だろうか。音数では三十一音で、空白で切られているし、無理に五七五七七で切る必要もない。また、『~の中の~』を三重にしたリズムも作られ…

シンジケート感想72・73

マジシャンが去った後には点々と宙に浮かんでいる女たち 漫画チックな短歌。場面として描きやすいが心情描写は特になく、作中主体は不明確。おそらく観客視点だろう。それでいてあいまいな部分が多く、女の数は、どのような表情で、美人か、マジシャンの年齢…

シンジケート感想70・71

「飲み口を折り曲げられるストローがきらい臨時の恋人がすき」 『飲み口を折り曲げられるストロー』はありふれた道具で通常好き嫌いを意識するほどのものでもない。それを『きらい』と述べ、対比して『すき』なのは『臨時の恋人』という全く通常ではありえな…

シンジケート感想68・69

瞬間最大宝石 ばらのとげ泡立つ五月 マジシャンの胸のうちでは鳩もくちづけ 『瞬間最大宝石』は『瞬間最大風速』がかけられた、あまり意味のない創作語。 半端なところに『月』があり、よくわからない修飾がかかっている点で2つ前の歌と似ている。 バラは古…

シンジケート感想66・67

爪だけの指輪のような七月を眠る天使は挽き肉になれ 『爪だけの指輪のような七月』クロウリングというものがあって、爪にする物らしい。ひっかくと危なそうだ。そのような七月。七月は夏が始まったばかりで動的であるべきにもかかわらず、その時期に『眠る天…

シンジケート感想64・65

卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 『背に飛び乗って』『ピン抜けば』が作中主体の動き。『卵産む』という『海亀』の説明。つまり海亀は静かに動いていない。作中主体は飛び乗る、手榴弾のピンを抜く、と動いている。特に手榴弾のピンを抜…