巣/人生の意味/植毛

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2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

シンジケート感想88・89

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい 『サバンナの象のうんこ』という唐突でユーモアがある装置。それに『よ』と呼びかけ、『聞いてくれだるいせつないこわいさみしい』と気持ちを告白している。どれもネガティブワードで、平仮名…

シンジケート感想86・87

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり ドラえもんは有名な藤子・F・不二雄による漫画のキャラクターで、未来から来たロボット。腹に付けた四次元ポケットから未来の便利な道具を取り出す。あらゆる面で駄目な少年、のび太を助…

シンジケート感想84・85

すごく てぬき 憎まれているのは俺か雪のなか湯気立てて血の小便小僧 小便小僧は像で、血は通っていないし、憎みなどもしないが、『俺』はそういう感情を受け取ったということで、何らかのうしろめたさがあって、小便小僧を見てそれが蘇ってきたという状況。…

シンジケート感想82・83

犬 ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は この短歌から浮かび上がる情景は、薄暗い部屋で一人でいて冷蔵庫を開けて作業しようとしたら、ふいに涙が流れてきた、という感じだった。まず、涙について、視覚による理解をしているので真っ暗な…

シンジケート感想80・81

フェンシングの面マスク抱きて風殺すより美しく「嘘だけど好き」 フェンシングはヨーロッパの剣を用いるスポーツ競技。2008年にフェンシング競技で日本人初のオリンピック銀メダルを受賞した。 二句目、四句目で格助詞『の』『より』が句の頭になっている。…

シンジケート感想78・79

腱鞘炎に祝福を 黒鍵は触れるそばからパセリの色に 腱鞘は手や足の腱の周りを包み込む部分。関節の動きにとって重要。ピアニストや漫画家などの手先を酷使する職業の方は腱鞘炎になりやすいらしい。黒鍵はピアノの黒い鍵盤。 『腱鞘炎に祝福を』は腱鞘炎を起…

シンジケート感想76・77

春雪よ恋の互換性想いつつあがないしばら色の耳栓 あがなうは『罪の償いをする』と『あるものを代償に手に入れる、買い求める』という二つの意味を持つ。ここでは後者で『耳栓』を買ったということだろう。贖う、購うという風に漢字が違うが、同源である。 …

シンジケート感想74・75

抱きしめれば 水の中のガラスの中の気泡の中の熱い風 定型から大きくはみ出している。意味で切るならば六六七七五だろうか。音数では三十一音で、空白で切られているし、無理に五七五七七で切る必要もない。また、『~の中の~』を三重にしたリズムも作られ…

シンジケート感想72・73

マジシャンが去った後には点々と宙に浮かんでいる女たち 漫画チックな短歌。場面として描きやすいが心情描写は特になく、作中主体は不明確。おそらく観客視点だろう。それでいてあいまいな部分が多く、女の数は、どのような表情で、美人か、マジシャンの年齢…

シンジケート感想70・71

「飲み口を折り曲げられるストローがきらい臨時の恋人がすき」 『飲み口を折り曲げられるストロー』はありふれた道具で通常好き嫌いを意識するほどのものでもない。それを『きらい』と述べ、対比して『すき』なのは『臨時の恋人』という全く通常ではありえな…

シンジケート感想68・69

瞬間最大宝石 ばらのとげ泡立つ五月 マジシャンの胸のうちでは鳩もくちづけ 『瞬間最大宝石』は『瞬間最大風速』がかけられた、あまり意味のない創作語。 半端なところに『月』があり、よくわからない修飾がかかっている点で2つ前の歌と似ている。 バラは古…

シンジケート感想66・67

爪だけの指輪のような七月を眠る天使は挽き肉になれ 『爪だけの指輪のような七月』クロウリングというものがあって、爪にする物らしい。ひっかくと危なそうだ。そのような七月。七月は夏が始まったばかりで動的であるべきにもかかわらず、その時期に『眠る天…

シンジケート感想64・65

卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 『背に飛び乗って』『ピン抜けば』が作中主体の動き。『卵産む』という『海亀』の説明。つまり海亀は静かに動いていない。作中主体は飛び乗る、手榴弾のピンを抜く、と動いている。特に手榴弾のピンを抜…

シンジケート感想62・63

雄の光・雌の光がやりまくる赤道直下鮫抱きしめろ セックスすることを「やる」などと表現することも多いが、代動詞としての働きらしい。 『雄』『雌』といういい方は動物らしさがある。性交について、本能や動物性を強調する場合も多く、ここでもそういった…

シンジケート感想60・61

脱走兵鉄条網にからまって迎える朝の自慰はばら色 鉄条網は鉄線で作られた柵である。有刺鉄線で作ることにより、越えようとするものにけがを負わせることができるとして、軍事分野で利用されることも多い。 『脱走兵』に対して『鉄条網』が絡まることはある…

シンジケート感想58・59

百億のメタルのバニーいっせいに微笑む夜をひとりの遷都 バニーは英語でウサギの幼児語を意味するが、ウサギをモチーフにしたレオタードなどを着た女性、バニーガールであることも多く、ここでもそうだろう。クラブやバラエティのアシスタントに用いられるこ…

シンジケート感想56・57

春雷よ 「自分で脱ぐ」とふりかぶるシャツの内なる腕の十字 春雷は春の雷、寒冷前線の通過に伴うことが多い。ふりかぶるは手に持ったものを頭の上に勢いよく振り上げること、剣を持った漫画のキャラクター、野球のピッチャーなど。 『内なる腕の十字』は腕を…

シンジケート感想54・55

考察というほどでもなくただの感想の書留だな、と思い直しました。別に今までと同じ風に書きますし、わざわざ前までのものを書き換えもしませんが、急に言い回しが気になったので変更します。 血まみれのチューインガムよアスファルトに凍れ神父も叫ぶこの夜…

シンジケート考察52・53

まなざしも言葉も溶けた闇のなかはずれし受話器高く鳴り出す 受話器というと3首前の『ぶら下がる受話器に……』が思い起こされ、またその続き物と考えると都合がいいように思われるのでここではそうすることにする。 3句目までについて、まさに『ぶら下がる…

シンジケート考察50・51

ブランコもジャングルジムもシーソーもペンキ塗りたて砂場にお城 遊具名を並べた後に『ペンキ塗りたて』と使えない理由を述べ、使用可能だった『砂場』で遊び、『お城』を作ったとしている。本当は先に述べたような遊具を使いたかったのだが、使えないから仕…

シンジケート考察48・49

ワイパーをグニュグニュに折り曲げたればグニュグニュのまま動くワイパー ワイパーは自動車の雨などを振り払うゴム製の棒。 一句と五句、二句と四句で『ワイパー』、『グニュグニュ』が繰り返さている。反復というより折り返し、回文などの言い方が適切なの…

シンジケート考察45・46・47

ゼラチンの菓子をすくえば今満ちる雨の匂いに包まれてひとり ゼリーを食べているらしい。ゼリーから『雨の匂い』がするのだろうか、違うような。『包まれてひとり』の字余りから落ち着けなさを感じる。一人の時間を落ち着いて過ごせばいいのに。 その首の細…

シンジケート考察41・42・43・44

夕闇の受話器受け(クレイドル)ふいに歯のごとし人差し指をしずかに置けば クレイドルはゆりかごの英語。受話器受けをクレイドルということはそれほど一般的ではないはず。 受話器は外されているのだろう。そこへ『歯のごとし人差し指』を『ふいに』置いた…

シンジケート考察39・40

マネキンのポーズ動かすつかのまに姿うしなう昼の三日月 マネキンは店で服などを着せられる人形だが、語源はフランス語でモデルを表す語を英語読みしたもの、フランス語ではマネカンであり、『招かん』では語呂が悪いといった事情がある。束の間は一束で指四…

シンジケート考察37・38

水滴のひとつひとつが月の檻レインコートの肩を抱けば レインコートの水滴に月が映っているという話。 『水滴の……月の檻』の表現は面白い。決してとらえることのできず、一つしかない『月』に対してすべての水滴を檻に例えることで捕まえようとする。 『レイ…

シンジケート考察35・36

乾燥器のドラムの中に共用のシャツ回る音聞きつつ眠る シャツを共用にしている、それを聞きつつ作中主体は眠るが、『共用』している相手はおそらく起きていて、選択してから眠る必要がある。他の家事も任せっきりという可能性もあり、そういった甘えについて…

シンジケート考察32・33・34

ケーキ食べ終えたフォークに銀紙を巻きつつ語るクーリエ理論 クーリエとは本来は外交文書を運搬する業務、転じて航空機を通じて書類や小口荷物を宅配するサービス。 カタカナ言葉、長音がバランスよく配置され、リズミカル。『クーリエ理論』は前句までと特…