巣/人生の意味/植毛

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ラノベ人気投票『好きラノ』 投票

 まとまった感想、書いてなかったな…という思いがありましたが、ちょうどいい機会とリミットがあったので乗っかっておきます。

 

lightnovel.jp

10作品まで可能ですが、自分が投票するのは1作です。

 

『祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る。』
【21上ラノベ投票/9784046805133】
品森晶/MF文庫J

 

それでは感想みたいなのをやります。

 

 

 

世界を滅ぼす邪神の眷属への対抗手段である“遺物”。
それを扱う才能を持たぬ【亜人】を純血人類たる【貴族】が従属させ、確固たる身分制度が敷かれた時代。
そんな千年後の世界に蘇った英雄・セロトは、人類の衰退ぶりに愕然としつつも、とある問題の解決のため、貴族の身分を得て、全ての叡智が眠るという【学院】に通い始める。
しかし、入学時の検査で遺物適正が最低ランクと判明。
劣等貴族と侮られることになるが、実技で実力の片鱗を見せていき……?
これは悪夢のような世界と、苦痛に満ちた虚構、そして闇を裂く微かな希望についての物語。

 いの月という小説をジャンルによって説明するなら、ボーイミーツガールという単語が浮かびました。勇者であるプロタゴニストたちの正体は『死せる夢の器』という遺物。『祈り手』──ひとまず、レイミアとアンゼリカ、中盤で加わるミードの3人の少女たち──の理想を反映することで、姿・性格・能力などが特徴づけられて顕現します。しかし、器こと勇者の身体はひとつだけ。 

 まずここで、いくつか類似設定を持つ作品が思い浮かびました。アリュージョニストからは妄想妖精≪クランテルトハランス≫。脳内友人や脳内恋人とも言われる呪術技術で、邪視と使い魔の複合とされます。

「妄想妖精クランテルトハランス。古代の妖精王は理想の兵士を創造するためにこの呪術をこぞって研究しました。伝え聞くところによれば帝国最強の夢女子セレネ=フルエルミーナは理想の彼氏を同時に百人以上も具現化・維持できたとか」

 

幻想再帰のアリュージョニスト 191話

終節:救『Parable of The Barren Fig Blade』

他作品ではfateの英霊召喚──特に『Fate/Requiem』の、「誰も彼もが聖杯を持ち、運命の示すサーヴァントを召喚することが当たり前の世界」や、ロックマンエグゼにおけるネットナビとの関係。そのような作品が描く主従は絶対に覆らない。そうした制約があるからこそ、それらの作品の従者は莫大な力を行使できるという面もあるでしょう。 物理的、現実的な超常の力←→その制約、セーフティになる絶対信頼の対象である主(あるじ)。

 プロタゴニストたちもまた、莫大な力を振るいます。基準から並外れた、まさに主人公としてふさわしいと言える能力。『祈り手』である少女たちは、彼らをそれぞれ「勇者様」「主様」「弟くん」と呼称しますし、彼女らが主人公に対応するヒロインであることも、本文中で幾度も指摘されます。

 器(身体)が一つであることからの、プロタゴニスト同士の人格の競合もストーリーの要です。レイミアは勇者の導き手として教団に育成され、彼らのとある計画の主要人物でした。しかし、後から現れた二人の祈り手がより強力な個我を勇者に与えたためにレイミアの勇者セロトは弱体化、存在そのものが揺らぎ始めます。レイミア自身のアイデンティティも大きくグラつき、セロトの特徴として表れた自己の本心(目を背けたくなるような欲望)に苦しむ彼女に、焦れた教団幹部が接触したことで起こる事態が本作のメインイベントです。レイミアは自分の願いと本性の起源、その写し鏡であるセロトや他の周囲の人々、世界の在り方、過去や今とも向き合うことになります。 

 いの月のもう一つのファクターに、種族差に基づく差別があります。アリュージョニストからおなじみの要素です。千年前に封じられた【邪神】の眷属である【魔人】たちとの戦争が活発化しており、6つの大国が有する学院の主目的は戦士の養成。純血人類である【貴族】と種族ごとに特徴的な器官を持つ【亜人】によって構成される人類には、遺物の扱いに長ける【貴族】の絶対的な優越が敷かれています。主要人物であるレイミア、アンゼリカ、ミードはそれぞれ竜人、天使、妖精と呼ばれる種族の亜人(ミードはハーフ)で、学院での地位も低いです。また、レイミアや勇者を送り出した教団は亜人こそが神と神秘の加護を受ける種族であると主張、その計画目的は千年前に貶められ逆転した身分の再転覆です。

 上位存在が定義した運命、支配階級が広めた格差に、矮小の身でありながら抗い、理想に近づけようとする人々の奮闘。品森晶氏の作品の魅力の一つをそう表すならば、いの月は確かにそれを引き継ぎ、別の物語として描き出そうとしてると言えるでしょう。また、男女が出合い、他者が出合い、それぞれで人間関係をやっていく。ボーイミーツガールが最もよく作品を定義するジャンルであろう作品と言えるはずです。

貴族

聖神『供儀の祭司ユネクティア』の教え『ユネクト聖教』で再定義された無徴人類。歴代教皇が受け継ぐ特級遺物『群青聖典』により祈族は『貴族』と『名づけ』られ、『劣った亜人を従えよ』と『命令』されている。

 

『祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る。』   P177:keyword

 

kakuyomu.jp

 スピンオフで、同世界、同時代にある別の学院が舞台の『ハニーウィッチ・ユーフォリア』です。こちらの主要人物は完全に女性オンリーな耽美百合学園ファンタジー。7/20に完全にひと段落が付き、情緒がめちゃくちゃになりました。能力とかもすごいインフレした気がする(開示だったんですが)。