巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想60・61

脱走兵鉄条網にからまって迎える朝の自慰はばら色

 

 鉄条網は鉄線で作られた柵である。有刺鉄線で作ることにより、越えようとするものにけがを負わせることができるとして、軍事分野で利用されることも多い。

 『脱走兵』に対して『鉄条網』が絡まることはある意味当然の成り行きともいえる。夜に出ようとしたならば『迎える朝』も当たり前だがその後の『自慰はばら色』は唐突である。これがポイントであり、この短歌にユーモアや明るさをもたらす点でもある。

 『ばら色』があるのはこの短歌のみでもない、血と精液が混ざるとばら色っぽいかもしれない。

 脱走の諦めが『自慰』にあらわされているのかもしれない。

 

 

目を醒ませ 遠くラグーンに傷ついた人魚にとどめを刺しにゆくため

 

 ラグーンは地形の呼び方であり、礁湖というサンゴ礁に囲まれた地形のこと。ディズニーシーのエリア名として「マーメイドラグーン」があるなど、人魚が住むといったことになっていることも多いようだが、伝承が元ではなく、サンゴと人魚のイメージがいいからというような気がする。特に確証はないが。

 前の短歌と軍事的な意味合いを含んでいる点で似ている。『目を醒ませ』から始まることも前首の『朝』との共通点ともいえる。しかしこちらはその内容が『人魚にとどめを刺しにゆく』とファンタジーチックである。しかし、『目を醒ませ』の命令形、『遠くラグーン』『傷ついた』という具体性が内容に生々しさを与え、冗談とも思えないような気持ちにさせる。空白をいったん置くことで、全体が会話文のような効果を与えている。

 

 止めを刺す、は『刺す』なんだな、ということも意外性があった。字にする現代短歌では漢字にするかということも選択のうちになる。刺すという文字は攻撃的だ。