シンジケート感想58・59
百億のメタルのバニーいっせいに微笑む夜をひとりの遷都
バニーは英語でウサギの幼児語を意味するが、ウサギをモチーフにしたレオタードなどを着た女性、バニーガールであることも多く、ここでもそうだろう。クラブやバラエティのアシスタントに用いられることも多い。遷都は首都の移転。ひとりの遷都は都落ちのことか?
『百億のメタルのバニー』はメダルの柄だろうか。そうすると、刻印された絵柄が動くはずはない、つまり『微笑む』は実際の動作ではなくそのように作中主体が感じたということになる。『百億』単位の大負けをしたのでは。
飛行機の翼の上で踊ったら目がつぶれそう真夜中の虹
『踊ったら』であるから仮定の話だが、メルヘンチックな空想に思わせて『目がつぶれそう』と具体的な肉体へのダメージに言及している。『真夜中』が続くため、太陽のまぶしさではなく、風圧によるものであることを匂わせていて、さらにその痛々しさが増す。
しかしそうすることで『真夜中の虹』を見たのである。『つぶれそう』は一見痛々しく見えるが、後に残るほどの後遺症を残す怪我ではない。全体としてはメルヘンで明るい短歌と言える。情景としては『夜』で暗くもありながら、そういった明るさがあるのは前首と対比的と言える。そちらは『バニー』と一見明かるさがあるが、賭けで大負けしたという大けがをしている。