2015-01-01から1年間の記事一覧
ホームルーム! ホームルーム! とシマウマの鳴き声がする夜の草原 『草原』と『シマウマ』は見たことのない遠い場所、生き物が想起される。『ホームルーム!』の『鳴き声』はそれとは真逆の身近出会った存在だろう。現在は生徒ではないのでかつてという意味…
ゆゆ、あいつとってもアサツキが大事なの、なんにでもふりかけたがる アサツキは葱の一種であり、葱のように薬味として利用する。食用葱では最も細いことが特徴。 二、三句目が妙なので区切り方を考える必要がある。一見『とってもアサツキが/大事なの、』…
夜明け前 誰も守らぬ信号が海の手前で瞬いている 大胆な破調、幼さや女らしさを漂わせる言葉遣いなどはなく、そういった意味では普通の短歌であるが、『手紙魔まみ』の中では目立たさられる特徴といえる。 内容は誰にも守られない信号についてである。普段か…
つっぷしてまどろむまみの手の甲に蛍光ペンの「早番」ひかる 蛍光ペンでメモ、というとラインマーカーズ最後の連作の一作、『「NASAへ行きます」』の歌があった。寝ている人に急いでいる人がメモをする、という大筋も完全に一致し、二方の対比が主であと…
巻き上げよ、この素晴らしきスパゲティ(キャバクラ譲の休日風)を 『キャバクラ嬢』とあるが『まみ』自体に、挿絵などの情報から女性としての自身の性の解放感というか、重要だと感じていないのでは、という雰囲気がある。裸で乳首が隠されていない絵であり…
手紙魔まみ、天国の天気図 サムライが天気予報を聞きながら描いた渦巻き、天国は夏 「天国の天気」がテーマのようで、似たものは『ラインマーカーズ』でも見た気がする。『サムライ』を出すことで、天国が死者の行く場所であることを強調する、堅いイメージ…
歯医者(デンティスト)にゆく朝などを、永遠に訪れない物の例として 前の短歌と強く関連する2つの要素がある。『永遠に訪れない物の例として』は4つ目の短歌の『永遠的なものの例として』に形が似ており、『歯医者』は9つ目に『はいしゃにいっていませんね…
腕組みをして僕たちは見守った暴れまわる朝の脱水機を 『僕たち』が登場する。『まみ』は女性であり、女性らしさをたびたびわざとらしいほど強調していたため、この男性らしさがある一人称は違和感をもつ。複数形であることも紛らわしい。妹ももちろん女性で…
ボーリングの最高点を云いあって驚きあってねむりにおちる ボウリングは玉投げ、ボーリングはドリルの穴掘りということを拘る向きもあるが、『最高点』からここでは玉投げを指していると考えられる。 親密な仲でボウリングの点というたわいない話で盛り上が…
世界一汚い爪の持ち主はそれはあたし、と林檎をさくり 自己卑下と林檎を切ることの話。前のフルーツである『苺』と同じように『林檎』が漢字表記であり、他にもカタカナの使われた箇所はない。しかし『あたし』『さくり』などのひらがなは柔らかみがのある語…
本当にウサギが付いたお餅なら毛だらけのはず、おもいませんか? 餅、ウサギの話について語り掛ける口調で読み手に思考を促している。『ウサギが付いた餅』というふれこみの菓子でも持っているのかもしれない。疑問符がついてはいるが、その問い自体には常識…
月よりの風に吹かれるコンタクトレンズを食べた兎を抱いて 『よりの』は『からの』の意味。『コンタクトレンズを食べた兎』はコンタクトレンズをなくしたことを「ウサギが食べてしまった」と結論した、という内容である。ウサギが現実の存在であるかどうかは…
出来立てのニンニク餃子にポラロイドカメラを向けている熱帯夜 『ポラロイドカメラ』はいつかの短歌にも登場したインスタントカメラである。デジカメによって時代遅れとなって衰退した。やや昔の人間には懐古感のようなものを湧き立たせる作用を持つのかもし…
天才的手書き表札貼り付けてニンニク餃子を攻める夏の夜 引っ越し後、表札を貼り、料理に取り掛かっているという様子。『ニンニク餃子』に関して、食べている最中だとも考えられるが、後の首を見ると料理中だとみるのが正しいように思える(二つ次、次回)。…
妹のゆゆはあの夏まみのなかで法として君臨していたさ 他人とあまり関わりたがらない人間の親しい人というと家族になりますが、その内でも年齢の近い方が親しみやすく、自己肯定感がないことから相手に依存したり、被支配状態になることを望んだりする。年齢…
ほむらさん、はいしゃにいっていませんね、星夜、受話器のなかの囁き 会話文部分がひらがなで、地の分は漢字。やや一般的でない『星夜』がリズムや雰囲気のために採用されていたり、『囁き』という難しめの漢字が使われている。『なか』はひらがなだが、接続…
<自転車に乗りながら書いた手紙>から大雪の交叉点のにおい 単純化すると「手紙からにおい」という内容であり、この時点で詩的ではあるが、現実味には欠ける文章。全体では『手紙』と『におい』を修飾する内容だが、そのどちらも全体と同じで、詩的に偏った…
それはまみ初めてみるものだったけどわかったの、そう、エスカルゴ掴み 『まみ』という言葉があるが、これは一人称で自分の名前を一人称として使うような人物である、ということになる。全体として口語の話し言葉で、助詞が省略された読みにくいものになって…
恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死 ひたすら『恋人の』を繰り返した後『死』という単純な形をしている。音を重視して読むと「コイビト」「コイ」「ヒト」の三つから構成された短歌としても取れるが、意味のない文字の羅列になる、四句目五句目間の「の…
まず、タイトルだが、五七五で、川柳というか、短歌の上の句の形である。『まみ』という固有名詞を持つ人物が主役の短歌集で、 手紙が好きであることから、対人コミュニケーションより筆記を通すような間接的な物を好むように見える。引っ越しから生活環境を…
明日は多分短歌書きます 世界平和未来は明るい希望宇宙富名誉幸福最高善金銀財宝隠された宝隠蔽された真実途絶えた王族不当な弾圧覆される治世弱者の雄たけび正当防衛トーテミズム諸民族の独立民族自治解放自由無限瞑想虚無空白空洞産めよ増えよ地に満ちよ乳…
高速道路の水たまりに口づけてきみの寝顔を思う八月 『高速道/路の水たまり』という六音の字余りから始まり、このあたりの歌の共通点。『高速道路の水たまり』は決して触れることのできないもののように登場し、これまで描かれていたが、この歌ではそれに口…
みずたまりに波紋拡げて溺れてるミクロサイズのイエス・キリスト 主体が水たまりの波紋に気が付き、その発生源は溺れてもがくイエス・キリストであるという説を唱えている、という内容。「水」「イエス・キリスト」というと、湖を歩いた奇跡が思い起こされる…
アンデルセンの焼きたてフランスパン背負ってNASAのセキュリティを突破せよ NASAか海か、どちらを目的にしていたのか、それらは両立しているのか。いい加減なままに進行していた。前首では『海へ10キロ』だったがこの歌ではNASAに着いている。…
路面には散らばる光 あのなかのひとつで蟻が溺れています 風景描写から二首前の歌を受けての反応。「溺れる蟻」への反応は他人事であり、実際に確認することもなく、そのこと自体が考えに影響しているわけでもない。その反応の様子は、彼自身もまたただ事実…
「みずたまりで蟻が溺れています」って高速道路の電光掲示 まだ高速道路の途中だったらしい。NASAがまだ遠い位置にあるのであれば、前歌での行動の奇妙さが増す。渋滞や事故の情報が流れるべき掲示板で蟻が溺れていることが表示されている、との内容。現…
一連を通してみると、物語が存在し、それが極めて重要な意味を持つ連作であることが少なくともわたしにとって理解ができた、という意味ではこの『ラブ・ハイウェイ』が初めてなのですが、そういった感想部分については最後まで終わった後にまとめることにし…
延滞のホラービデオが散らばった部屋の扉を閉ざして海へ 海へ向かうべく外へ踏み出し、扉を閉めている。『延滞のホラービデオ』は相手とともに見るつもりだったが、すれ違うようになって見ないままにしていたことを示す。そうなっている状況を受け入れること…
貸靴に消毒スプレー吹きつけて海への旅費を作る七月 海への旅行を決定したようで、旅費をためるためにアルバイトをしているらしい。前歌まででは自分の心理状態や周りの環境が主だったが、それに対する行動を決め、動き出している。相手のいる海へ向かうこと…
全身に二人の指紋を光らせて調律師をみたことがないピアノ 思い出に浸っている歌。ピアノを二人で触っていたことやシーツで『調律師』のことを言ってふざけあっていたことを回想している。調律師は6つ前の歌にある。 その前回の調律師の歌や『全身に』『指紋…