巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想57・58

ストラップに鎌倉彫のウサギあり こいつはまるでおかきのようだ

 

 『こいつはまるで~のようだ』から刑事ドラマのセリフが想像された。熟練の刑事が言ってそうであるという気がしたのである。前歌の『指名手配の』が影響していることもあるだろうが、そうでなくともこのセリフにはそういった独特性はあると思う。

 『鎌倉彫』は鎌倉の伝統工芸である。木を材料に彫って漆を塗ったもので、草木がモチーフにすることが一般的。『ウサギ』は特徴的なわけでもないが、絶対に禁じられているということもなさそうである。『ストラップ』を作ることもあるようだが、ここでの『鎌倉彫』は「伝統工芸品」の固有名詞として、語感や字数での成約も考慮に入れて選択された程度のものだと捉えておく。

 伝統工芸品のなかの『ウサギ』は実在せず、触れることのできないものである。『まみ』は芝居がかった警官の「役」を作っている。参考品のカバン類を検討しようとしたところで、ストラップの『鎌倉彫のウサギ』を発見した。それを『おかきのようだ』と考える。

 『おかき』も日本的伝統を感じさせるものである。『鎌倉彫』と見た目に似ているともいえるだろう。『ストラップ』=ファッションを食へ変換しようとすることは前々歌と似たテーマであると見出せる。「年老いた勤め人」の「役」を装うことで、職をファッションに優先させる視点を自身に課したのである。

 そこで『ウサギ』が唐突に表れてくる。愛の偶像として、大切にしていた『ウサギ』だが、ここでは「役」のためにさらりと流されている。自分に役を課すことで無意識に転換できたのか、それともできていなかったのか、ということになっていく。

「刑事のよう」

 

 

 

ほむほむの心の中のものたちによろしく。チャオチャオ。まみ(紅しゃけ)

 

 『ほむほむ』は作者である穂村弘のこと。『チャオ』はイタリア語の挨拶。親しい間柄で使われ、こんにちはとさようならの両方の意味を含む。機嫌のよさそうな雰囲気のある挨拶だが、少女向け雑誌「ちゃお」の由来でもある。

 『よろしく。チャオチャオ。』という、好意的には見えるが、実質的な内容としては何も言っていない、ただの挨拶にも見えかねないこの言葉が主題である。これを『帆無穂無の心の中のものたち』に対して投げかけた。『まみ(紅しゃけ)』も同時に投げているが、『まみ』はともかく『(紅しゃけ)』は本当に内容がなく、単なる照れ隠しだと解釈する。

 『ほむほむ』もいろいろと思うことがあるだろうが、その全ての意見それぞれの個性を重んじますよ、どうぞ自由にしてくださいという内容であると推測する。意見は色々とありますが、人格を非難しているわけではないのでどうか嫌いにならないでください、という卑屈な防御線、被害妄想の表現ではないのか。そのような卑屈な判断を濁すべく『チャオチャオ。』と外国語で言って見たり『まみ』と自分の名前を出したり『(紅しゃけ)』と全く関係のない単語を飛び出させたりする。自分の言語が価値のないものであって、それによってあなたが何がしか感情を変化させることも全く重大ではないですよ、と自己卑下ではあるが、それに付き合ってくれた相手の誠意などを裏切っているともいえる。

「言葉の意味」「無意味」