手紙魔まみ感想186・187・188
この手紙よんでるあなたの顔がみえる、横がおと、正面と、みえる
上の句は二句目三句目で字余りが連続する。下の句では四句目は五音の字足らず、五句目は八音の字余りに句点による強引な定型の逸脱を作っている。
『よんでる』『みえる』『横がお』など平仮名の使用も目立つ。これも提携の逸脱と同じく、感情が素で表れている様の表現だろう。『顔がみえる』では漢字が使われているにもかかわらず『横がお』なのはその個人の『横がお』自体に幼げな印象を大きく持っているところがあるのだろう。『手紙』『顔』『正面』は一般名詞であり、『よんでる』『みえる』は個人の動作、『横がお』は人自体だ。
『あなた』は『ほむほむ』であると推測され、写真でやり取りしてそうで直接会ったことはないか少なそうと補完されると、『横がお』と『正面』を区切って強調する意義もおぼろげになる。
「表現」「視点」
手紙魔まみ、みみずばれ
こんなにもふたりで空を見上げてる 生きてることがおいのりになる
死んだウサギにいもうととまみが祈っているんだと思われる。空を見上げるという生きることには必要のない動きだが、死んだウサギのことを空を眺めて思いを寄せながら、普段は空や死に別れたペットのことは気にしないでちゃんと生きよう、たまに空を見る時には思い切りをもって見ようという切り替えのことを意識しているのだろうか。
「切り替え」
甘酒に雪溶けてゆくなぜ笑っているか何度も訊かれる夜に
へらへらしながら酒を飲んでいるのだろう。自分でもなぜ笑っているのかよく分かっておらず、酒をがぶがぶやっていて、何度聞いても答えないから何度も訊かれているんだろう。口語ではなく一般的な詩っぽくなっているのも、作中主体なりの宵の表れなのかもしれない。いつもとは違うのだ。
「差」