巣/人生の意味/植毛

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短歌

手紙魔まみ感想63・64

欲しいのはふつうの奴さ、目がガラス玉で、しっぽを口にくわえる 二句目までが主張、三句目からは『欲しいの』を具体的に述べている。動物型のおもちゃのようなものを挙げているように見える。『奴』という人または動物のような書き方からミスリードに誘われ…

手紙魔まみ感想61・62

まみの髪、金髪なのは、みとめます。ウサギ抱いてるのは、みとめます。 服装をチェックしているような言い方。上の句と下の句に分かれているが、『のは、みとめます。』という定型に沿うようにも配慮されている。上の句では定型が完全にかみ合っているが、下…

手紙魔まみ59・60

手紙魔まみ、アイ・ラヴ・エジソン まみの白い机は夢にあらわれて「可能性」と名乗った。アイム、ポシビリティ 区切れはひどく、字余りが大量にあり、『夢』と最初から表明されているせいでどんなに変でも仕方がないと言い訳したような奇形である。『夢』と…

手紙魔まみ感想57・58

ストラップに鎌倉彫のウサギあり こいつはまるでおかきのようだ 『こいつはまるで~のようだ』から刑事ドラマのセリフが想像された。熟練の刑事が言ってそうであるという気がしたのである。前歌の『指名手配の』が影響していることもあるだろうが、そうでな…

手紙魔まみ感想55・56

残酷に恋が終わって、世界ではつけまつげの需要がまたひとつ 『恋』という個人でありながら重大なものの終わりを強調するために『残酷な』という強力な形容詞による補強と『世界では』という問題を拡張が使われている。『つけまつげ』は装飾品であり、購入し…

手紙魔まみ感想53・54

左から、宇宙スカート、プリンスカート、色盲検査スカート、まみ作 スカートが並べられているという描写は、前回から続くデパートの風景を思わせる。宇宙は前回の最終的に『月』に向かったことと関連する。『プリン』は食という貨幣交換で満たしやすい欲望と…

手紙魔まみ感想51・52

清潔なベッドの上でコンビーフの巻取り鍵を回してあげる コンビーフは肉を高温高圧で処理した缶詰で、巻取り鍵はコンビーフのあけ口として伝統的に使用されている、ということらしい。大体わかってはいたが実際見たことはない。世代差なのだろうか。 コンビ…

手紙魔まみ感想49・50

幸福な王子の肩に従順なツカイパシリの鳥がいたこと 『幸福な王子』はオスカーワイルドによる教訓小説だが、機械仕掛けの神でいきなり彼岸においての価値が示されることにシュールな面白味を感じる。元々金の像と鳥が会話している時点でかなりメルヘンで、そ…

手紙魔まみ47・48

帽子たち、まみを守ってください。と深爪姫の星夜の祈り 句点、読点があるが、それなりに落ち着いている。前歌では句読点自体が注目されるほど異様に目立っていた。ここでは小説中の文章の程度で、目立つほどではない。下の短歌では三句目でいったん文が終わ…

手紙魔まみ感想45・46

発熱の夜のゆめから溢れ出す駅長さんの飼う熱帯魚(ステーションマスターズ・グッピィ) 『ゆめ』と歌中にあるように、幻想系統の短歌である。高熱でうなされることで夢の現実感が増し、現実に映し出されようという様子。『駅長さんの飼う熱帯魚』も『ステーシ…

手紙魔まみ感想43・44

ローズヒップを「ばらのおしり」とおもってた 兎が囓ってしまったおしり ローズヒップはバラの果実。茶に使ったり食用油にしたりジャムにしたり。「ヒップ」が「バラの果実」を意味し、尻のことは関係ないとウィキにある。 『アサツキ』などでもそうだが、単…

手紙魔まみ感想41・42

いもうとをやめてあなたのともだちになるわって頬はさんでくれる 『いもうと』という立場は偶然の産まれのままに自然と属性としてつけられるもので、そういった意味で自分たちの意思によって結ばれる関係の『ともだち』より下位にあるように思われる。『とも…

手紙魔まみ感想39・40

ホームルーム! ホームルーム! とシマウマの鳴き声がする夜の草原 『草原』と『シマウマ』は見たことのない遠い場所、生き物が想起される。『ホームルーム!』の『鳴き声』はそれとは真逆の身近出会った存在だろう。現在は生徒ではないのでかつてという意味…

手紙魔まみ感想37・38

ゆゆ、あいつとってもアサツキが大事なの、なんにでもふりかけたがる アサツキは葱の一種であり、葱のように薬味として利用する。食用葱では最も細いことが特徴。 二、三句目が妙なので区切り方を考える必要がある。一見『とってもアサツキが/大事なの、』…

手紙魔まみ感想35・36

夜明け前 誰も守らぬ信号が海の手前で瞬いている 大胆な破調、幼さや女らしさを漂わせる言葉遣いなどはなく、そういった意味では普通の短歌であるが、『手紙魔まみ』の中では目立たさられる特徴といえる。 内容は誰にも守られない信号についてである。普段か…

手紙魔まみ感想33・34

つっぷしてまどろむまみの手の甲に蛍光ペンの「早番」ひかる 蛍光ペンでメモ、というとラインマーカーズ最後の連作の一作、『「NASAへ行きます」』の歌があった。寝ている人に急いでいる人がメモをする、という大筋も完全に一致し、二方の対比が主であと…

手紙魔まみ感想31・32

巻き上げよ、この素晴らしきスパゲティ(キャバクラ譲の休日風)を 『キャバクラ嬢』とあるが『まみ』自体に、挿絵などの情報から女性としての自身の性の解放感というか、重要だと感じていないのでは、という雰囲気がある。裸で乳首が隠されていない絵であり…

手紙魔まみ感想29・30

手紙魔まみ、天国の天気図 サムライが天気予報を聞きながら描いた渦巻き、天国は夏 「天国の天気」がテーマのようで、似たものは『ラインマーカーズ』でも見た気がする。『サムライ』を出すことで、天国が死者の行く場所であることを強調する、堅いイメージ…

手紙魔まみ感想27・28

歯医者(デンティスト)にゆく朝などを、永遠に訪れない物の例として 前の短歌と強く関連する2つの要素がある。『永遠に訪れない物の例として』は4つ目の短歌の『永遠的なものの例として』に形が似ており、『歯医者』は9つ目に『はいしゃにいっていませんね…

手紙魔まみ感想25・26

腕組みをして僕たちは見守った暴れまわる朝の脱水機を 『僕たち』が登場する。『まみ』は女性であり、女性らしさをたびたびわざとらしいほど強調していたため、この男性らしさがある一人称は違和感をもつ。複数形であることも紛らわしい。妹ももちろん女性で…

手紙魔まみ感想23・24

ボーリングの最高点を云いあって驚きあってねむりにおちる ボウリングは玉投げ、ボーリングはドリルの穴掘りということを拘る向きもあるが、『最高点』からここでは玉投げを指していると考えられる。 親密な仲でボウリングの点というたわいない話で盛り上が…

手紙魔まみ21・22

世界一汚い爪の持ち主はそれはあたし、と林檎をさくり 自己卑下と林檎を切ることの話。前のフルーツである『苺』と同じように『林檎』が漢字表記であり、他にもカタカナの使われた箇所はない。しかし『あたし』『さくり』などのひらがなは柔らかみがのある語…

手紙魔まみ19・20

本当にウサギが付いたお餅なら毛だらけのはず、おもいませんか? 餅、ウサギの話について語り掛ける口調で読み手に思考を促している。『ウサギが付いた餅』というふれこみの菓子でも持っているのかもしれない。疑問符がついてはいるが、その問い自体には常識…

手紙魔まみ感想17・18

月よりの風に吹かれるコンタクトレンズを食べた兎を抱いて 『よりの』は『からの』の意味。『コンタクトレンズを食べた兎』はコンタクトレンズをなくしたことを「ウサギが食べてしまった」と結論した、という内容である。ウサギが現実の存在であるかどうかは…

手紙魔まみ感想15・16

出来立てのニンニク餃子にポラロイドカメラを向けている熱帯夜 『ポラロイドカメラ』はいつかの短歌にも登場したインスタントカメラである。デジカメによって時代遅れとなって衰退した。やや昔の人間には懐古感のようなものを湧き立たせる作用を持つのかもし…

手紙魔まみ13・14

天才的手書き表札貼り付けてニンニク餃子を攻める夏の夜 引っ越し後、表札を貼り、料理に取り掛かっているという様子。『ニンニク餃子』に関して、食べている最中だとも考えられるが、後の首を見ると料理中だとみるのが正しいように思える(二つ次、次回)。…

手紙魔まみ感想11・12

妹のゆゆはあの夏まみのなかで法として君臨していたさ 他人とあまり関わりたがらない人間の親しい人というと家族になりますが、その内でも年齢の近い方が親しみやすく、自己肯定感がないことから相手に依存したり、被支配状態になることを望んだりする。年齢…

手紙魔まみ感想9・10

ほむらさん、はいしゃにいっていませんね、星夜、受話器のなかの囁き 会話文部分がひらがなで、地の分は漢字。やや一般的でない『星夜』がリズムや雰囲気のために採用されていたり、『囁き』という難しめの漢字が使われている。『なか』はひらがなだが、接続…

手紙魔まみ感想7・8

<自転車に乗りながら書いた手紙>から大雪の交叉点のにおい 単純化すると「手紙からにおい」という内容であり、この時点で詩的ではあるが、現実味には欠ける文章。全体では『手紙』と『におい』を修飾する内容だが、そのどちらも全体と同じで、詩的に偏った…

手紙魔まみ夏の引っ越し(ウサギ連れ)感想5・6

それはまみ初めてみるものだったけどわかったの、そう、エスカルゴ掴み 『まみ』という言葉があるが、これは一人称で自分の名前を一人称として使うような人物である、ということになる。全体として口語の話し言葉で、助詞が省略された読みにくいものになって…