巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想231・232

塩を抱く者はいのるないのるなとくるぶしをなめつづける波

 

 曖昧な前半とそのままの後半。『抱く』系統の続き物としてもとれる。

 『塩を抱く者』とは誰か。『いのるないのるな』と繰り返される命令。平仮名も分かりにくさを表すためでもあり、単純なコミュニケーションのみしか行えない『並み』の表現であることを示すものでもある。「根拠のない期待をすること」を『いのる』と定義し、それをしないようにという忠告を与えていると取る。けれど『塩を抱く者』がやはりわからない。塩を抱くこと自体を止めようとしているのではない、しかし『塩』とは?潮でもなく、抱きかかえるほどの塩に思い当たるものがない。

 五句目が『つづける波』で字足らずであり、半端な気持ちにさせられる。『波』で漢字が帰ってくる。

 『塩を抱く者』またはそれになろうとする者への波の語り掛けで、彼は浅瀬に居て、くるぶしに波がかかり続けているのである。

 

髪飾り波に漂う 落雷に打たれて沈みゆくマーメイド

 

 神話上の生物の死を詠っている。死体は沈み、髪飾りが水面を漂うがそれは『マーメイド』の証拠とできるほどのものでもなく、荒れる海でどこかに消えていくだろうとしか思えない、頼りないものだ。そういった美しさが特徴。歌の最後で『マーメイド』という種明かし。

 神話上の生物という完全なフィクション性を置きつつも、死というある意味でのリアル。砂浜での出来事ではない、というのがこれまでの流れと異なる。いわゆる「神の視点」からでなければ見ようのないものを語り、漢字も当然に使われている。