巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ夏の引っ越し(ウサギ連れ)感想1・2

まず、タイトルだが、五七五で、川柳というか、短歌の上の句の形である。『まみ』という固有名詞を持つ人物が主役の短歌集で、 手紙が好きであることから、対人コミュニケーションより筆記を通すような間接的な物を好むように見える。引っ越しから生活環境を大きく変えてやっていこうという気持ちである、ウサギ連れからそういうぬいぐるみが好きなのだろうか、といった情報がわかる。おそらく女性だろう。表紙絵ではパンツしか履いておらず、乳首も露出しており、ウサギ耳のカチューシャのようなものをつけて、化粧が濃く、カバンを大量に持っている、という絵である。ネット風に言えばメンヘラサブカルという方向でおおむね間違ってない気がする。

 

 書籍のタイトルもそれであり、序章(連作?)のタイトルも同じである。

 

手紙魔まみ夏の引っ越し(ウサギ連れ)

 

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき

 

 タイトルに反して冬から始まっているらしい。句点と『まっしろ』からひらがらになっている部分から興奮して子供っぽくなっている様子を想像した。非常に寒い状況のように見えるが、それを新鮮に受け取ってはしゃぐという反応から、幼さや余裕が感じられる。

「寒い」「はしゃぐ」

 

明け方に雪そっくりの虫が降り誰にも区別がつかないのです

 

 ざっと見て思い出すのは百人一首29番の『心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花』である。「霜が降りて白菊の花と見分けがつかないので手さぐりに折ってみよう」という内容で、「冬」「区別がつかない」などの共通点が存在する。

 百人一首の歌は正岡子規の『歌よみに与ふる書』で批判されていることで有名という悪評がある。青空文庫で公開されているものを見たところ、「このようなつまらない嘘は面白くない。ありのままを書くか、絶対にありうることのない大ウソを書くかにするのがよい」といった意味のことが書かれてある。

 本題の歌では、『雪そっくりの虫』とあり、これについて知識がなかったので検索したところ、綿に体がおおわれたアブラムシを指して言うらしい。秋から冬の時期に現れ、俳句では冬の季語として用いられる。

 確かに雪のように見えるが、出現の時期と積雪の時期が重なることはあまり無いようであり、そこがウソの部分といえるのかもしれない。『そっくり』『です』は無理にあらたまった口語調のように思える。

 酷評された歌をあえて本歌取り(?)し、現代風かつかしこまった口語という点が目に留まった。主観性にならざるを得ず、本来使えるはずのない『誰にも』という語の具体性に欠ける大勢の第三者も現代的という感じがある。

本歌取り」「口語」