巣/人生の意味/植毛

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連作 メッセージをやめろ

価値がないものから順に置き換わる世界の中で立っていなさい

マリオネット海に投げ込めば巨大な鱏が呑みこむだろう

ふわふわのチワワを抱いて外へ出るこのようにして原初へ還る

ぴったりの棺はあるがとりあえずいつでも出せる場所へとしまう

「兄さんはわたしを食べる?」月曜日、B級映画を死ぬほど見てた

花時雨 ここでいくらか待つならば誰かと どうぞお構いなく

狂わないメトロノームを壊したいだんだん強くを待ちきれなくて

最悪の生活をしたその頃の夕日はあんなに美しかった

完璧なペガサスは正に言うでしょう「幸せならばお前ではない」

コトブキを司ってはならないとマグロを縛るロープをほどく

こうすれば燃えてなくなる物でさえ大切なこともあったと思う

恐かったわたしは誰にも見つからず生まれ変わって紅葉になれよ

「永遠に無理だ」と書かれたラブレター奴隷の宗教 安息日 よう

「It's a true world」と言いバグりだす膨らむ泡を見守っている

「うんめいをかえてみないか」そう言って指を鳴らして口笛を吹く

小説を書いていた頃聴いていた曲は葬式で流しておいて

優しく刺すプールサイドに薔薇の棘沈んだ底で消えて無くなる

部屋の角がとてもきれいに見える眠気で変な気になる土曜

金曜日じっと呼吸を潜ませるジャンヌ・ダルクが嫌いなオタク

未だ一円ほども稼がない偉大なだけの僕らの感情

明日からここは精神病棟で僕が患者のままごとをする

生き方がわからないのと嘆いてはお前は馬鹿だと叱られた、春

事務室でぬるくなってるお茶を飲むこういうことが繰り返される

「本当は好きじゃないんだ星なんて」星座もどうせ嘘でしかない

「ぅゅぅゅ」と「人間は死ぬ」をくりかえすラジオ局だけ残された都市

こんなにもつらい思いで生きてきたこぼれるほどに魚類の心臓

どうしても陳腐なモノしか書けなくて断筆すれば愛してくれる

どうしても短歌がエモくなるときは灰を被って夏まで眠れ

どうしてもお前はオレになれないよ苦しんだだけ異なっている

見るな、読め。言うな、喋れ。聞くな、識れ。頼むな、命じよ。解ったかい?

最高にしようぜと打たれたスマホ格安になる風物詩たち

赦せればどれほど楽になるでしょう錆びきった鍵をしまう木曜

「秋ですね」「いいえ、冬よ」と嘘をつく英語の授業が終わる水曜

孤独でも異なる種類のものでしょうそこは整形外科待合室

単純に言えばそれらは打ち上げの花火であって青春じゃない

完璧な短歌が全て詰められた世界の果ての池に沈もう

心地よく一際強い風が吹き桜吹雪が舞ってもひとり

選ばれて選ばれてした子羊をうらやむばかりで何も言えない

大嘘とナイフを抱いて眠る冬とてつもないほど静かに暮らす

もし人にやっていく意味がないのなら(ここには過激な行為をいれて)

「魂なんて本当はないの」口には出さず聖書を配る

赤蜻蛉散りそこなった蒲公英がうめいて「エロいこと嫌だ」って

死ぬまでにやりたいことの伝票がかつてなくみじかくなる火曜

「あなたには愛より治療が必要」と書かれた手紙を抱く月曜

宇宙一美味しい桃を食ったって「死にたいなあ」って思うと思う

ミサイルは僕よりずっと現実で短歌なんかじゃかないっこない

「恋人がほしい」と叫んだ俺の影ほかの影と変わらないらしい

水曜日勃起は全部エゴだから明るい島へ流そうね 母

キラキラと夜景の中に観覧車大人はみんな汚いからだ

誰からも愛されなかった人形へ「これは俺だ」の口づけをする

 

ありがとうございました