巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想105・106

氷からまみは生まれた。先生の星、すごく速く回るのね、大すき。

 

 二つの文章。三句目が七音に字余りしていると考えられる。

 二句目までの文は、自身と氷の似た性質や、人間に似たものではない、という意識があるように思われる。自分を持て余しているような、受け入れられないような感覚。

 三句目以後は、『先生の星』への肯定や好感の表明。具体的には『先生』『星』『すごく速く回る』のどれも具体的な何かを表現することに成功していないが、それは主体にとって、『大』という字で就職するほど強く受け入れられている。『星』『すごく』『大』など、削ることが可能であるような語が見られるにもかかわらず、字余りという代償を払って表現される感情は、定型以上の価値が主体に見いだされたためだろう。

「自己否定」「他者肯定」

 

 

 

この世界のすべてのものは新しい名前を待っているから、まみは

 

 名前は呪術的、宗教的な意味からも重要な意味を持つ。戒名、洗礼名などが宗教的命名の代表例にあるし、呪いの類にも対象者の名前が重要など、色々ある。

 命名されることで、よりふさわしい存在になったように感じられる。命名とは受け身の行動であり、自分はただ認めるだけで、全く新しい価値観によって素晴らしいものへと変貌できる。そういった機会を『すべてのもの』が『待っている』ということを言う。確かにそうなのかもしれないし、そうでもないのかもしれない。

 ここまでは、主体の価値観を反映しているとはいえ、普遍的法則について述べている。五句目の途中、最後の五文字の、『から、まみは』が主体の考えである。途切れているのだから何も表明していないともいえるし、後に続く歌もこれを反映したものではないのだが、大人しく他の全てのものといっしょに『待っている』ことは嫌だと表明しているように思う。急に展開し、おしこむような形にしてでも、自分は『この世界のすべてのもの』と違う存在であると表明したかった。

「自意識」