巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想183・184

受話器とってそのまま落とす髪の毛もインクボトルも凍る夜明け前

 

 インクは通常対凍性が高い気がするし、髪の毛に凍るほどの水分が通常含まれているように思えないので、「通常凍るはずのないものが凍るほどに寒い」という強調の表現。『受話器』が登場している。以前の歌では『ぶちまけたげろの内容を叫び続ける』だったがここでもまともな会話は行えないで、『とってそのまま落とす』というようになってしまう。その理由が『凍る夜明け前』の感受である。寒々しさ、切迫感がある。

 

 

冬の陽の音階を聴く散水車の運転手のようにさみしい朝は

 

 前首に続いてこれも『さみしい朝』を詠っている。『冬の陽の音階を聴く散水車の運転手のように』と、比喩がほとんどを占める構造になっている。

 『陽の音階』というが、現実には『陽』という光に音が存在するわけではない。五感に狂いが生じるほどに苦しいさみしさを感じている。『散水車の運転手』と対象が絞られているが、その職業は苦しい労力を強いられるというイメージが共有されているわけではない。とらえどころのない苦しみを感じているのか。

 比喩として『冬』を用いることからすると、この歌の時制は冬と限定されず、むしろ別の季節である可能性が高まる。特に季節について影響されない苦しみについてを詠っているともいえるが。