巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想76・77

春雪よ恋の互換性想いつつあがないしばら色の耳栓

 

 あがなうは『罪の償いをする』と『あるものを代償に手に入れる、買い求める』という二つの意味を持つ。ここでは後者で『耳栓』を買ったということだろう。贖う、購うという風に漢字が違うが、同源である。

 『ばら色』がある短歌はこれまで二首あったはずだが、それらは戦場の場面であった。この歌は耳栓を購入する場面を詠っている。『春雪』で季節とそれが見えるような場所であるという情報が示されている。『恋の互換性想いつつ』が作中主体にとっての心情で、『あがないしばら色の耳栓』と行動の描写。

 『恋の互換性』とは恋において、どの程度人間を取り替え可能であるか、ということについて考えることである。①自分が入れ替わる場合 ②相手が入れ替わる場合 ③一般論 のように分類できるはず。

 『バラ色の耳栓』について考えると、耳栓の機能上では色は特段重要な点ではないが、購入する場合にはある程度重要な判断基準になりうる。使っていれば見られるものだし、見た目以外の機能については判断しづらい。実際ばら色の耳栓があってもおかしくはない。耳栓を使うのは集中したいときということが多い。

 四句、五句を音できると『あがないしばら/色の耳栓』であるから、バラを買ったというミスリードの後にその色の耳栓だった、とネタばらしをしている、かのような効果がある?

 失恋し、自分の先の恋についての互換性について考えながら、人に見せるバラではなく、目先のことに集中するための耳栓を買ったという状況。

 

 

 

 

ペーパーフィルターに世界の始まりを見守る神々の春のゆうぐれ

 

 ペーパーフィルターとは、コーヒーなどを入れる時に使う紙。濾紙。

 これも春。

 濾過の様子を『世界の始まり』に例え、それを見る者を『神々』に例えている。不必要なものを取り除き、目的物を取り出そうとすることを『世界の始まり』と例えるのでは大げさすぎるか、そうでもないと思う。

 目的のコーヒーが世界なのだろう。『神々』にとってはそれは一瞬で飲み終えられる暇つぶしである。

 ゆうぐれ、は何となく神々しい用語に見えなくもない。黄昏ならば、神々の黄昏、ラグナロクが思い出され、とても神々しい。