シンジケート考察21・22
抱き寄せる腕に背きて月光の中に丸まる水銀のごと
抱き寄せられることに反して、月光の中で水銀のように丸まる。「『水銀のごと』『丸まる』」はある意味独特と言える。水銀は常温で液体なので、当然自然には丸まらず、円形の器に入れるなどすれば丸まる。黙って抱き寄せられたり、型にはまりたくはないが、結局もっとも落ち着けるのは型にはまった状態だ、ということか。『腕』を拒否して『月光の中』へ向かうことも人よりも大きなもので包まれたいというような。
「猫投げるくらいがなによ本気出して怒りゃハミガキしぼりきるわよ」
女言葉でカギかっこ付き。『本気出しておこりゃ』など、けんか腰。
ユーモラス。実際のところ、猫を投げるとどうなるのだろうか。結構ちゃんと受け身できるのかもしれないが、現実としては難しいような。
この作品としては、投げた猫はおそらく受け身をとって平然と逃げていくような気がする。この女性の猫だろうか。野良猫をとっ捕まえるのは無理がある。自分の猫ならば自分のものを少し乱暴に扱っただけというふうになる。『ハミガキしぼりきる』では歯磨き粉が無駄になる。共有物ならばけんか相手の男性もダメージを受けるといえば受ける。