巣/人生の意味/植毛

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シンジケート考察19・20

モーニングコールの中に臆病のひとことありき洗礼の朝

 

 モーニングコールはホテルなどで朝に起こしてもらうことを目的として電話をかけてもらうこと。今では客室に目覚ましがあるなどの理由から行われない場合が多い。ケータイにも目覚ましがあるのも大きいでしょう。種痘等と同じく現代では失われた文化ともいえる。洗礼はキリスト教における儀式で、これをもってキリスト教に正式に入信した、とみなすことが多い。転じて初めての経験などの意味もある。

 『モーニングコール』自体が全く身近ではなくなってしまったのでよくわかりにくい部分がある。『洗礼』が実際の洗礼ではなく初めての経験、つまりここではホテルとモーニングコールに初めて訪れて、初めての『モーニングコール』の受け取りを先例とみなしているのかもしれない。洗礼は普通ならば通う教会で受けるので、ホテルに泊まるはずはないし、穂村さんはキリシタンではないようですから。けどこの短歌の前後の中の『ウエディングヴェール』『パイプオルガン』『鳩』はキリスト教らしいワードですね。

 『モーニングコール』をかけてきた従業員に「『臆病』ですね」とでも言われたのだろうか。そしてそれを「これがホテルの洗礼かー」と感じました、ということなのか。

 

パイプオルガンのキイに身を伏せる朝 空うめる鳩われて曇天

 

 パイプオルガンは鍵盤楽器の一種。とても大きく、立派な教会には立派なパイプオルガンがある。曇天はくもり空のことで「どんてん」と読む。鳩はキリスト教では重要なモチーフの一つで、ノアの箱舟で水が引いたことを伝える、ハトの姿をして聖霊が下る、などがある。

 これもキリスト教風味と『朝』という時間帯が特徴となっている。美しく、絵になる情景。三句目と四句目の間には空白がある。一句目、二句目では「パイプオル/ガンのキイに身を」というように、音と意味の切れ目が一致していない。『ガンのキイに身を』は声に出すと歯切れ良い。

 オルガンの練習をしたまま眠ってしまったのだろう。教会での演奏は人前で素人の歌に合わせて歌うわけで、結構大変だそうだ。前の句のみだと窓から光が差し込んでいそうなのだが、鳩が飛び立つと曇りだった、という暗い落とし方である。明→暗の形。よくないことが起こるのだろうか。