巣/人生の意味/植毛

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シンジケート考察14・15

舞う雪はアスピリンのごと落丁本抱えしままにかわすくちづけ

 

アスピリンは解熱鎮痛剤。熱などで服用。白い錠剤。落丁本は印刷の不手際でページが抜けている本。順序がバラバラになっている場合は乱丁本。

『雪』の中での『くちづけ』という古典的なシーン。雪が『アスピリン』にたとえられ、『落丁本』を抱えている。『雪』は雪害を起こすほどドシャドシャ降るような場合には困るものだが、このようなキスシーンなどにおいてはロマンチックを演出する小道具として人気がある。しかし、何かしらの人間の働きかけのために生み出される生産物ではなく自然物だ。都会でも見かけられるなどの点においても好都合な特性を持つ。しかし、雪害を起こしこそすれ、結局物質的な意味では価値はないものだ。一方、アスピリンはロマンチック性とは程遠い存在だが、適量を取ることで切迫する病状をはっきりと和らげるという素晴らしいものである。落丁本は大量生産の際に起こりうる不手際、ミスの象徴と言える。アスピリンのような薬は便利だが、それに雪のように取り囲まれ、身を委ねすぎることを恐れたのが、落丁本を抱きしめながらのキスなのだろうか。『くちづけ』は肉体と直接に結び付いた行為と言える。ロマン、物質主義、肉欲主義が混ざり合った短歌と言えるかもしれない。

 

編んだ服着せられた犬に祝福を 雪の聖夜を転がるふたり

 

 『編んだ服』であるから、手作りなのだろうか。スペースが空いているため三句目、四句目は全く区切れている。

 『ふたり』がメインの登場物であり、詠み手もそのうちの一人であるかどうかが焦点として大きい気がする。個人的には詠み手も転がっていると思う。聖夜で気持ちが盛り上がっていて、転がりたいほどなのだろう。それで出合い頭にそこここで祝福を与えまくっているのだろう。すべてに喜びが満ち溢れている状態。『犬』に対する『編んだ服着せられた服』という意外に細かい観察がある意味での強調であり、この歌の特徴となっている。