巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想176・177

カラギーナン、ソルビン酸K、アゾ色素、さようなら、やな原材料たち

 

 これら『原材料』は食品添加物などに使われる。前にあった『うれしい原材料』に比べて、保存剤で毒性が疑わしいという傾向が『やな原材料』にはあるらしいようにググったところ思えた。

 そういった物へ別れの挨拶をするというのは、いままでは使用していたそれらを気にするようになったということだろう。健康に気を配って毎日の食事をやっていくというのは平凡なことのようにも思えるが、孤独を詩で表現したがるようなタイプの人間とは別属性のやり方でもある。繰り返しのむなしさから脱却して、ちゃんと生活していきたいということへ関心を持ち、やろうという気持ちが大本で、それでも短歌は使っている。『やな』という言葉も普段の言葉遣いで、作中主体の作風らしさにつながりがある。断絶が成されるわけではない。

 

『生活』『別れ』

 

 

いもうとが寝言で愛を叫んでる、天道虫の毒がぐるぐる

 

 天道虫は毒を持たないが、派手な色は捕食者に対して毒を警戒させる効果を持ち、死にかけると苦い汁を出して威嚇したりするらしい。

 『いもうと』はこれまでにもよく登場した家族で、割と仲がいいらしいから寝言を聞くシチュエーションもそれほど珍しくはないだろう。『毒』にうなされているというストーリーにも真剣なわけではなく、茶化してふざけているだけなのだろう。

 『愛』の『叫』びも、読者にとっても主体にとっても、真剣に取り合うべきもののようには思わされない。ただの『寝言』であることがはっきりと示されているからである。夢の中でだけは、『いもうと』には真剣なものなのだろうが、彼女自身もすぐに忘れてしまうだろう。めまぐるしく動く人間の感情、現実と仮想、そして各自やっていくということ、『ぐるぐる』が示す永劫回帰胡蝶の夢がモチーフでは別になかろう天道虫の毒。

 

『仮想』『真剣み』