巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想115・116

東京のカタツムリってでっかくて、渦、キモチワルキレイ、熱帯!

 

 促音や長いカタカナでリズムが乱れるが『キモチワル/キレイ』という合成語で切れ目になる。声に出して読むと、目で見る印象とは異なり、それほど崩れてはいない。

 東京で野生生物を眺めるという体験にパワーがあるのかもしれない。実際にサイズが大きいのかはわからないが自然物の少ない場所にいる野生生物を見かけると、意外性などの要因から大きく、そして生々しさからの『キモチワルキレイ』という驚きへ連結する。

 野生、自然は人工物より脆く、生々しいので『キモチワル』という衝撃を与えるが、同時に本来的な生物感が『キレイ』という気持ちも生み出す、同時に浮かぶ逆方向の感想を同時に表そうとしたのではないか。

 『熱帯!』は唐突にも見えるが、短歌は割と天気や季節が地合わせのように押し込まれることもあり、ここでも地理ではなく天気・季節を表す語なのだろう。ヒートアイランド現象などに見られるように、都市は自然を克服するのではなく、屋外はより暑く、厳しい環境を生み出すことがより正しい認識となりつつある。熱帯とはジャングルではなく都市だ。

 リズムの乱れはちょっとした発見の心地よい驚きを表すようにも思える。

 

 

「自然」「都市」「リズム」

 

 

 

包丁を抱いてしずかにふるえつつ国税調査に居留守を使う

 

 カタカナがなく、出来事と行動だけが描写されている。

 行動は『しずかにふるえつつ』と『居留守を使う』である。前者のひらがな表記から、主体の心象の不安を思わされる。後半も消極的である。

 『包丁を抱いて』も行動であるが、消極的な行動や『包丁』という道具から情景描写のように見える。家庭内で最も危険な刃物を持ち出しつつも、構えるのではなく抱く様子はすがるようであり、他に当てにできるものがない孤独な状況に「家庭」内で陥っているという状況を示すための描写であるように思える。 

 『国勢調査』が本歌の外部の出来事で、メインである。この外部勢力が迫ってくるために主体は恐怖し、一連の行動をしている。外部の人間に、自らの境遇を語ることが恥ずかしく恐ろしいのだろうか。全く余裕が感じられない歌が珍しく、恐怖が効果を上げている。

 前歌が唐突でありながら衝撃的ではなかったことに比べると、本歌は全く定型でありながら、心の休まる気をさせない物になっている。

 

「余裕」「恐怖」「家庭」