巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想79・80

昭和基地の床に散らばるトランプのキング、クイーン、その付け睫毛

 

 昭和基地は北極の調査基地である。娯楽が少なそうでトランプをやってそうという想像は特に突飛なものでもない。キングやクイーンもいるだろうしあの絵柄は確かにつけまつげだと推測出来る。

 外が極寒の、人間には耐えられない環境で、そのため人工物の中でいることしかできないという条件は、前々歌に登場した「宇宙」と似たものがある。そこでの宇宙は宇宙空間のみを指すのではなく、地上を含めての全世界的という意味合いに近かったが、宇宙空間としての宇宙、壮絶な環境という意味での宇宙に、最も似ている地球上の存在が『昭和基地』である。

 その昭和基地での人間関係は、それなりに友好であることが推測される。能力、仕事の嗜好などが近いためにそのような極限環境に組織で侵入しているのでは、と考えられるためである。余暇にはトランプに興じるような健全な関係で、散らかしたまま他の用事へと向かった、という予測をしている。

 望ましく適切、つまり自然な人間関係を過酷な自然環境の中で構築する、その道具は人口のトランプである、そこに人が描かれている、そのまつ毛は大げさであり、おそらくつけまつげであるという人口と自然の入れ子がここで詠われるものである。

「自然」

 

 

 

ぴかぴかのモデルガンたちに囲まれてねむれよ無精髭の恋人

 

 モデルガンは暴力装置の偽物である。本物であれば一つだけあればよく、見せびらかす必要もないしむしろ有効に活用するためには知られない方がよい。『モデルガンたち』は収集や顕示が主要な目的であって、それらは『無精髭』と同じく、男らしいダメさを象徴している。『ぴかぴか』も丁寧なものの管理を表していて、自分自身の髭に無関心な男の様子との対比である。

ここまでの詩集の全体として、女らしさからの自己卑下、自己批判がよく見られたが、ここで男性的なものの欠点を挙げつつ、それを『ねむれよ』と見守るような視点から観察している。受け入れるためでも否定するためでもなく、ただ存在を知ろうという視点だろう。

「欠点」「観察」