巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想55・56

残酷に恋が終わって、世界ではつけまつげの需要がまたひとつ

 

 『恋』という個人でありながら重大なものの終わりを強調するために『残酷な』という強力な形容詞による補強と『世界では』という問題を拡張が使われている。『つけまつげ』は装飾品であり、購入して使用するものである点を強調するために『需要が』とあり、『またひとつ』は『恋』を自分のものだとして個人面を強調したことに対する一般面の記述。

 『つけまつげ』『またひとつ』は音にして語呂の良さを感じ、口語としても違和感のなく使われる言葉だが、『需要が』は四句と語句の間で切れ切れになり、少し専門性のある言葉で、下の句にアンバランスな形ができているが、短歌の意味自体とは完全に別の「語感」などによるものであるところが面白い。

「恋」「世界」「個人」

 

ウエハースを海に浸して囓りつつ指名手配の魂のこと

 

 甘いウエハースしか持っていないが、海の塩味を感じたい気持ちなのだろうか。『魂』を『指名手配』は本来支配できない内面を国家権力という強力な暴力装置で制限することを示唆している。作中主体自体は摘発に関してはどのような感情を抱いているのか示されていないが、示すほどの価値もなく興味も引かれない、ただ食事中にとりとめもなく思浮かべるようなニュースの話題、程度の関心だと推測する。他人の事件より自分の食事の味付けを気にしている。

「食事」「事件」

囓の漢字がウエハースっぽい。