巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想51・52

清潔なベッドの上でコンビーフの巻取り鍵を回してあげる

 

 コンビーフは肉を高温高圧で処理した缶詰で、巻取り鍵はコンビーフのあけ口として伝統的に使用されている、ということらしい。大体わかってはいたが実際見たことはない。世代差なのだろうか。

 コンビーフは熱処理されているが、生っぽいのでもう一度加熱したり、調味料をつけて食べるらしいので、そこから考えると『清潔なベッドの上』が対立した存在としてとれる。調味料や脂が零れてはベッドが汚れる。ホテルなど宿泊施設のベッドでコンビーフを開いているという構図を予想する。

 『回してあげる』なので自分のためではなく、誰かのためか、誰かに命じられてであることが想定される。『キャバクラ嬢』としてのワンシーンなのではないかという気がするが、私のキャバクラに関する知識は不正確で偏見に満ち溢れている。

 個室で家族、恋人であるかのような役割を演じるサービス業、としてキャバクラを考えておく。『清潔なベッド』はあつらえられた、作り物としての家庭を意味する。『コンビーフ』についてわざわざ専用語に近い『コンビーフ』と『巻取り鍵』で正確な描写をしようとするのは、擬似的な家庭を演じること自体が擬態化、抽象化であり、具体的状況を正確に描写することでかえって違和感を放つことを期待したためである。

『キャバクラ』『演』

 

 

 

「十二階かんむり売り場でございます」月のあかりの屋上に出る

 

 デパートの売り場案内の音声のパロディ後、『月のあかりの屋上』という客観描写が示される。

 『かんむり売り場』なるものは存在しないと考えられる。『かんむり』は権威の象徴であり、権威は簡単に金銭取引できる類のものではないためである。購入によって手に入るのはコスプレ道具の域を超えることはなく、権力者や成功者に送られるような、本当の意味での冠ではない。

 『月の明かりの屋上』は幻想的だが、ここで上の句のデパート風が効果を発揮する。真夜中にはデパートは閉められるので、非日常的なものに見えてくるのである。そしてそれが特別である権威を表す『かんむり』のイメージと重なる。デパートの屋上という舞台が「現代と資本主義」を示す、それへの転換が月と王冠による「自然と王権」である。

 『屋上』を『十二階』ということも常識への挑戦という意味合いを含んでいる。

「価値」「常識」