巣/人生の意味/植毛

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手紙魔まみ感想45・46

発熱の夜のゆめから溢れ出す駅長さんの飼う熱帯魚(ステーションマスターズ・グッピィ)

 

 『ゆめ』と歌中にあるように、幻想系統の短歌である。高熱でうなされることで夢の現実感が増し、現実に映し出されようという様子。『駅長さんの飼う熱帯魚』も『ステーションマスターズグッピー』も七七と受け取ることはでき、フリガナではない前者の方がむしろ区切れ目が文節にあり、適切である。同意味の英語によるフリガナが二重性を読み取れ、夢と現実が重なり合うような雰囲気を出す。

 モチーフ自体は夢に登場する特に意味のない魚という感じで、夢らしさを醸し出す。

「夢」「二重性」

 

 

揺すってもゆゆは起きない。ゆゆ、ゆゆ、フィラメントって手話でどうするの?

 

 フィラメントは糸状の物質を示し、筋繊維、照明器具、繊維工業などの分野で用いる。

 日常語とは言い難いもので、手話において使う必要性が薄い言葉のように思われるが、『まみ』はぜひ使いたいらしく、『ゆゆ』を起こそうとしている。

一句、二句は通常の韻で進みつつ『揺する』と『ゆゆ』の「ゆ」を重ねて使用してリズミカルにな印象。それを二句目の読点ではっきりと区切る。三句目は『ゆゆ、ゆゆ』と字足らずかつ発音しづらい反復。四句目は音では自然だがあまり一般的ではないカタカナ語の『フィラメント』で気を引く。五句目はわざとらしく字余りになるよう口語を使い、『?』をつけるほどに徹底させる。意味では『フィラメント』とかみ合わない『手話』によって違和感を引き立たせる。

『揺すってもゆゆは起きない』までは前歌までを意識するとインフルエンザで寝込んでいることを推測させる内容。それを読点で打ち切って「どうでもいいこと」が音、口語、内容から徹底的に強調された行為によって妨害している。それが親密さの表れか単に無礼なのかといった関係性の考察に繋がっていく。

「どうでもいいこと」「睡眠妨害」「関係性」