シンジケート感想185・186
飛び去りし者は忘れよぼたん雪ふりつむなかに睡れる孔雀
睡れるは「ねむれる」と読む。
『飛び去りし者は忘れよ』という、過去のことを思い悩むのはやめよというメッセージ。『ぼたん雪ふりつむ』からはやさしさを感じ、『睡れる孔雀』は落ち着き払った優美な姿が想像される。
冬の歌であり、孤独という調子もうかがえるが、悲観したところはなく、すました格好良さ。
あかるくてさみしい朝の鳥かごにガラス細工のブランコ吊す
『あかるくてさみしい』は人工のものの多くから感じられる。何かをごまかすがごとく明るさを強調して、かえって違和感を感じさせるようなものは多い気がする。ここで焦点を当てたのは『鳥かご』だ。鳥を一匹閉じ込めて、観賞するための檻。
『ガラス細工のブランコ』もきれいだが、実際ブランコとしての機能は期待できないし、鳥にブランコが必要なわけがない。上記の『あかるくてさみしい』人工物としての性質を持つものだ。それどころか野生ならば空を自由に羽ばたけるはずの鳥の隣に、子供に空中を揺れる感覚を楽しませるための遊具であるブランコの模型を置くことは、一種の皮肉ですらある。それを何の感情も込めずに、淡々と行う乾燥的な様子。