巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想169・170

あっかんべかわせば朝の聖痕は胸にこぼれた練り歯磨き(トゥースペイスト)

 

 聖痕イエス・キリスト磔刑時の傷、またはそれに似た信者らに表れた傷。後者はキリスト教の「奇跡」に分類されるもので、強い共感や妄想の表れであったり、偽装であったりする。

 『かわせば』は挨拶をする(交わす)と、よけるという意味のどちらかという疑問があるが、『あっかんべ』を考えると前者が妥当だろう。

 内容としては、ハミガキがこぼれていることを注意した、ということなのか。『聖痕』の比喩は注意側からの指摘か、つけた側からの言い逃れか。

 

 

 

 

「許さない」と瞳(め)が笑ってるその前に揺れながら運ばれてくるゼリー

 

 デート中のじゃれ合いだと推測される。

 『揺れながら運ばれてくるゼリー』が中心で、くぼみになる部分。前半部は五・七・五の完全な定型だったが後半は音と意味の区切りにずれがあり、意味では五・十となる。『ゼリー』の長音部分の存在感が違和感を出してくる。ゼリーは特に必然性があるものではないし、音からすると二音にすれば定型に近くまとまって見えるのに、わざと選択されているものだ。『揺れながら』の不安定な存在感とのバランスが違和感になっていて味。『運ばれてくる』というのも例えば「運ばれるゼリー」などとすれば音での違和感がなくてスッキリするが、スッキリしただけでは駄目で、存在感を主張していくことが重点。

 そのうえで三句目までの内容に戻ると、ここでは『瞳が笑ってる』というのは『笑っている』という正式な形式から音のために省略があり、後半の違和感を強調しているということが感じられてくる。『その前に』についても、この語自体は意味がなく、前置きというか、音を埋めるために選択されただけの語ということがあって、これらは後半の違和感と対比するものとして設置されている。

 また、瞳を「め」と読ませるのは一般的ではない。