シンジケート感想137・138
試合開始のコール忘れて審判は風の匂いにめをとじたまま
『風』テーマ。
『風の匂い』は実際にはグラウンドの芝か何かの匂いだろう。なんとなく目を閉じてみると、思いのほかよい風が吹き、心地よい気分になったという。『めをとじたまま』というのは見えないものを匂いという形で感受したことを強く記憶しようとしての行為であり、時を止めたい、という願いの表れであるが、前半部から彼は審判で、試合開始に必要なコールをしない、つまり試合が始まらないということで、無意識的に願いをかなえているという二重の形になっている。
噴水に腰かけて語るライオンの世界におけるレディ・ファースト
ライオンについて、雄は立派なたてがみを持つが、これは実生活上では邪魔になり、狩りなどを雌に任せることが多いといった印象がある。
ここではそれほど細かいことは必要なく、遠くの野生の世界の中に、人間じみた階級があるおかしみを表しているのだと思う。ライオンは動物園の目玉としてもメジャーであるが、それは自然に対する人間の優位性を表そうとする場でもある。
噴水も水という自然物を町の中のオブジェに利用した優位性の象徴。どっぷりと人工物につかりながら、野生のなかにも人間味があるということを自慢げに話している人間は、戯画的なおかしみがある。