シンジケート感想131・132
真夜中の大観覧車に目覚めればいましも月にせまる頂点
大観覧車で眠り、起きると頂点につくところだった、という内容。
定型であり、その分違和感なく内容が受け取られる。物理法則や一般常識に当てはめてありえない事態が現出しているわけでもない。
観覧車の途中で眠るということに着目。観覧車に一人で乗っていることが推定される。非現実的というほどではないが、ある程度限定的な状況である。相手の約束が都合が悪くなって一人で来た、昼間に喧嘩して途中で帰った、など、交際相手と不和があったと想像。それでよくない気分で一人大観覧車に乗るが、一瞬眠った後『月にせまる頂点』というタイミングで目覚め、不和が解消されることを予感させる。
一人が明言されているわけではないのでよほど気が置けない相手と乗り、リラックスしきって眠ったという可能性もあるが、眠るのはともかく目を覚まさせようともしない様子なのは違和感があり、一人なんじゃないかと思う。
暗い燃料(フエル)タンクの中に虹を生み虹を殺してゆれるガソリン
『ゆれる』は二首前の「象のバリウム」の短歌とイメージが被る。
ガソリンが揺れることで虹ができるということは実際はないであろう詩的表現。生まれたとしてもそれを生んだガソリンによって汚くなり、殺される。生んだことも殺したことも気にしないでガソリンが揺れている。虚無系の首であり、『虹』を繰り返しても、ガソリンの化学的で不快な匂いが浮かんでくるよう。