巣/人生の意味/植毛

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シンジケート感想68・69

瞬間最大宝石

 

ばらのとげ泡立つ五月 マジシャンの胸のうちでは鳩もくちづけ

 

 『瞬間最大宝石』は『瞬間最大風速』がかけられた、あまり意味のない創作語。

 半端なところに『月』があり、よくわからない修飾がかかっている点で2つ前の歌と似ている。

 バラは古くから栽培の歴史があり、バラの季節がいつかということについてはっきり述べることは難しいらしいが、開花時期は5月~6月であり、6月の誕生花でもある。また、五月のバラという楽曲がある。

 二句目までで五月はバラの見どころ、と述べられ、『鳩もくちづけ』するようなほどに色めき立った季節であると述べる。『も』は~ですら、~さえという驚きを示す語。くちばしではされるはずがない『くちづけ』を『鳩』でさえ行っている。『マジシャン』は芸を売って他人の気分を高めるという職業で、明るく、明るくという状態にあるべきだが、心のなか(=『胸のうち』)には孤独さが付きまとう。すでに明るい五月にはかえって居場所がないような不安感があり、道具の鳩ですら嬉しそうで、つらい、のような感じ。

 

 

 

目薬をこわがる妹のためにプラネタリウムに放て鳥たち

 

 作者に実の妹はいないといっていたはず。短歌に仮の家族が登場することは多いらしい。

 プラネタリウムは仮の空を映す装置であり、人の科学で、現実以上の自然の空、星をみようとしている。空を遮る電線、建物、飛行機などの人工物と同時に自然物である鳥も徹底的に排除がされる。そこに『鳥たち』を『放て』という高らかな宣言。『鳥たち』は自然物であり、自分に近い位置にある救いのシンボル。

 『目薬』も人工物で、明確に外部の存在、正体がわからないものへの恐怖。目という重要な観察機能へダイレクトに影響するという意味も大きい。『目薬』『プラネタリウム』という人工物に、異質であるという理由から恐怖を抱いているのだ。

 男にとって妹は性欲の対象ではないながらも庇護すべき女性、のように捉えられる。『のために』から、助けようという意思が強くみられる。しかし音節上では『こわがるいもう/とのために』という切断が起こっており、妹の存在の虚構性が現れている。

 実際にいない妹とは、守られたい自分の投影である。守られる役、守る役の一人二役が短歌で行われている。