巣/人生の意味/植毛

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シンジケート考察23・24・25

「とりかえしのつかないことがしたいね」と毛糸を玉に巻きつつ笑う

 

 作中主体はこの人物に笑いかけられている者だろう。カップルの短歌に見える。

 『毛糸を玉に巻きつつ』が特徴的。例えば毛糸をめちゃくちゃに投げ出す、というのもなかなかに『とりかえしのつかないこと』だが、実際には毛糸を玉に巻く、という秩序的な行為を行いつつ非日常に憧れている。非日常に憧れつつも、安穏とした日常の心地よさが人割と伝わってくる短歌。

 

 

「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪に背中に

 

 これもカップルの短歌。どちらかが作中主体なのだろうが、どちらも同じ行為をしていて、特に心情描写も分かりやすくされているわけでもないので、作中主体にはそれほど重要性がないといえる。漫画の扉絵みたいな短歌。

 わかりやすすぎて特筆すべきことも浮かびにくい。『毛玉』など冬らしい語が多かったが、『花』と春らしさが出てきている。きれいに五七五七七の音になっている。

 

クロスワードパズルの穴をぶどう酒係(ソムリエ)に尋ねし君は水瓶のB

 

 ソムリエはレストランなどのワイン専門の給仕人。酒場にいるのはバーテンダー。ぶどう酒係はそれほど一般的な言い方ではないよう。水瓶のB、はみずがめ座で血液型がB型ということだろうか。性格占いでよく使われそうではあるが、どちらも科学的には根拠は乏しいだろう。

 ソムリエのいるようなレストランでクロスワードパズルをすることも、ソムリエに回答を聞くことも普通はしないような行為であり、自由で型にはまらない人間、という評価を彼女にすることができる。『これは水瓶座のB』の性質について当てはまるといえるようだ。性別については特に言及はないが、穂村弘(男)の短歌で『君』は女であることが多いのでは、と思って女としておく。

 自由な人間へのあこがれを詠っているのだろうか。